「月の光は毒光線、見れば狂う赤い瞳~」
「それ歌……なの?」
「そうよ、私とスーさんで考えた素敵な毒の歌マーク2バージョン3.14エキストラエディション!」
よくわからないネーミングセンスだな、と因幡てゐは彼女を見て思う。
楽しげに歌いながら茶菓子を頬張るのは、花の異変以降、毒を売りに来る人形の妖怪メディスン・メランコリーだ。毒なんて有り触れた品だが彼女の能力を使って集められた物は純度が高く、故に大事な取引相手となっている。
「だからってなんで私が茶なんて出さなきゃいけないのさ……」
「ん? どうしたの?」
「なんでもないよ、こういうのはあんたと同じセンスのあいつがやることだってね」
今頃は里でもたもたと薬を売っているであろう、鈴仙・優曇華院・イナバを頭に浮かべる。彼女のネーミングセンスも最近は改善傾向にあるが、メディスンのと大差は無い。
「今時の若い子ってのは似たようなもんかねぇ」
「てゐちゃんは違うの?」
「てゐちゃん言うな! あんたより私はずっと年上なんだからね」
胸を張るてゐをじっとメディスンは見て、
「年上? れーせんよりずっと小さいじゃない」
「これだからあんたは若いっての。妖怪の見た目なんて自分の精神次第でどうにでもなる、むしろ生きてる年に合わせて大きくなるってことは精神が未熟な証拠さね」
「じゃあ私も大妖怪ってわけだ! えへん!」
頬杖にしていた肘が卓から落ちそうになる。
「……はぁ、天狗の新聞に出てたゆとりってやつはこういうのを言うんだろうねぇ」
意味が解ってないらしく、首を傾げる彼女を手で追いやってさっさと食べるよう指示する。生まれたばかりの妖怪のはずだが、羊羹を手掴みで食べるこもなく菓子楊枝で割りと上品に食べていく。
「んー、美味しいねスーさん。これここで作ったの?」
「うちは菓子屋じゃなくて薬屋だよ。確か里のそこそこの店だったと思うよ」
「げ、人間が作ってるの? 毒入ってない平気だけど?」
「あんた自身が毒みたいなもんなのに心配することかい!」
するとメディスンは楊枝を咥えながら不安そうに眉尻を下げた。
「だって、こんな美味しいので懐柔されたら嫌じゃない、精神的な毒よこれは!」
「人間はんなこといちいち気にして作っちゃいないって。ほれもう時間も経ってきたんだし、さっさと食っちまいなよ」
「私は負けない……っ! 人間から人形を解放するその時まで……!」
「なんだってそんなに人間が憎いのさ?」
「そりゃ私をずっと閉じ込めていたからね」
「どういうこと?」
続かない
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