世の中における、出会いのきっかけとはどのようにして作られるのだろう。
それを作るのはたいていの場合、自分ではない誰かだったりするものだ。
自分の力だけで誰かとの結びつきができるだなんてことはほとんどない。それができるのは力が強い者だけなのだ。
それが、この世の中が弱肉強食と言われる所以なのじゃないかと思う。
一人でも強い人だなんて、ほとんどいないのだから。
もっと強い人に助けてもらうために、人は強くなる。
私が日々鍛錬に励んでいるのもきっとそんな汚い思惑があるのかもしれない。
爺様。
師匠。
私の祖父であり師匠は、孫娘であり弟子である私と、彼の主人である幽々子様を残し、どこかへ消えてしまった。
そう、どこかへ。
未熟者の私ではもう一度会いまみえるどころか、場所の検討すらつかないのだ。
もう一度師匠と会うためには、幽々子様の助けが私には必要不可欠だ。
しかし、今の幽々子様には私を助けてくれる気はないのだろう。それくらいはわかる。
だから私が修行をしているのは、幽々子様をお守りするのにふさわしい力を手に入れるためであると同時に、師匠を探し出す助けをいただけるように幽々子様に認めてもらうためなのだ。
うーん。
話が長くなってしまった。
とは言っても、これは私にとってはごくごく短い思考にすぎない。
ただ、会話の途中の回想にしては長すぎる、という話だ。
目の前の眠そうな目をした魔女は私の答えを待っている。
「私は――」
私は、気の利いた話などできない。
それを、この魔女にわかってもらうことにしよう。
☆
紅魔館の図書館にだなんて来たのは初めてかもしれない。
『ねえ、妖夢。ちょっと、借りてきてもらいたい本があるんだけど――』
こんな、幽々子様の頼みがなければこんなところには来ないだろう。
高い天井にまで届く本棚にぎっしりと詰め込まれている本。この時点で受け付けない。
圧倒的な量の知識の濁流の中に、その魔女は一人本を読んでいた。
私の求める本を探してくれた司書は、どこかへ行ってしまった。曰く、棚の整理を命じられているのだという。気の毒だと思ったが、それを楽しんでいるらしい。
まあ、人それぞれだ。
私は特に用もないのに、一人本を読むその魔女へ話しかけたのは、何故だろうか。
一人で知識に挑み、己を高め続ける姿に自分を重ねたのかもしれない。
それが独りに見えたというのが、私の傲慢で未熟なところなのだろうと、思うのだが。
「あの」
「何かしら」
返事をしながらも顔はあげない。苦手だ。これは苦手な人種だ。
しかし話しかけた手前、私が何か話さなければならないだろう。……何の話題もないのに。
「あなたはここで何をしているのですか?」
我ながら酷い質問だ。
魔女の口から息が漏れた気がする。
「本を読んでいるのだけど」
「ああ……そうですね」
会話が続かない。まあ、タイプが合わないのだろう。向こうから話しかけてくる気配もないことだし、こちらから話しかけた身としては少々心苦しいけどおいとま――
「貴女は本を読まないの?」
ちら、と本越しにこちらに目を向けてきた。
……この程度の気配が読めないというのは、剣士としてまだまだ未熟者の証。精進しなければ。
ともあれ、これで会話になった。
「私は、あまり読みません。指南書の類は読むのですが」
そう言うと、この魔女は「あら、そう」とだけ言ってまた視線を完全に本に戻してしまった。
この魔女にとって、来訪者は本を読む者か読まない者にしかならないのだろうか。
「あなたは何故本を読むのですか?」
「話すと長くなるわよ」
本から目を離さないまま、平坦な声でそう言う。
周りを見回すと視覚に訴えかける本の海。
……朝までかかりそうだ。
「……いえ、結構です」
丁重に辞退することにする。
「あなたは何故外に出ないのですか?」
意趣返し、という意味合いもあった。
剣士としてあるまじき性根の腐った恥ずべき行為だ。自分から話しかけておいて、勝手に腹を立て、相手を攻撃するようなことを言うなど。
しかし、それ以前に不思議だとも思ったのだ。
この少女のことを、外で見かけたことがない。
「ずっと、ここにいるのですか?」
「基本的にずっとここ。外に出ないのは――」
もう一度、目が合った。私の心など見透かされているかのような目。
「――別に、さしたる興味もないからよ」
「興味って」
「貴女が本を読まない理由と一緒じゃないかしら?」
「…………」
どうも、この魔女に口で勝てる気がしない。
話しかけるべきじゃなかっただろうか。
「だいたい貴女、外に出て何をしているの?」
「何をって……」
私は外に出て何をしているのだ?
いや、それは友人に会いに行ったり……友人って誰だろう。例の春冬の時以降霊夢や魔理沙たちと親交はあるし……いや、でもこの魔女だってその二人との付き合いはあるだろう。
じゃあ私は外に出て、この魔女とは違う何をやっているのだ?
「修行……とか」
「修行、ね」
ようやく口に出せたのは、たったのそれだけだった。
別にいいじゃないか、修行で。修行だけで。私にはそれが全てじゃないのか。
「じゃあ、貴女はどうして修行をしているの?」
目の前の魔女が笑った気がした。
こういうのを意趣返しと言うのかもしれない。
☆
「私は」
どうせ難しいことは言えない。私はこの魔女と違って未熟者なのだから。
「私は、自分のために修行をしています」
私の言葉を聞いた魔女は、少々呆れたようだった。
なんて失礼な。
「それは当たり前じゃないの?」
「当たり前……じゃない」
当たり前なのか?
いや。
どうなのだろう。
幽々子様をお守りするために、師匠を探すために、それは全て自分の使命であり願いでありエゴなのだから、それをこなせるようになるために修行をするのは自分のためではないのか。
違うのか?
混乱する私の思考を。
パタン、と。
本を閉じる音が遮った。
「まあ、別にそれならそれでいいんじゃないかしら」
ちょっと。それはないだろう。
これだけ悩ませておいて……。
「今日はもうこれくらいにしておきなさい。そろそろうちの館のボスが起きてきちゃうから」
え、それは困る。
何というか……あの雰囲気は飲まれたら引き返せない感じがする。
とりあえず本を貸してくれた礼だけを残し、図書館を後にする。
――前に。
私は扉の前でくるりと振り返った。
「……次会う時は、本を読む理由、教えてもらってもいい?」
「…………」
魔女は――パチュリー・ノーレッジは再び開いた本から目を離して、胡散臭げに私を見つめた。
「別に、いいけど」
その返事は、本を見ながらだったけど。
「ありがとう」
それが、彼女なのだろうと思った。
☆
その出会いが、私にとってどんな意味を持つのかはわからないけれど。
そもそも、私が一方的に押しかけて、興味を持って、一方的に押しかける宣言をしただけなのだけど。
私の知らない世界を知っているこの魔女が。
私の知らない世界を教えてくれるかもしれないこの魔女が。
私にとって財産になる気がしたのだ。
それはたぶん、出会いのきっかけを与えられたから。
出会いのきっかけはまだ他人から与えられていても。
そこから踏み込む勇気は、私自身が持つべきだと、そう気づいたから。
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