――時間の無駄だったわね。
それがパチュリーの感じた全てだった。
元よりわかっていたのだ。「切り札」「秘密兵器」などと題されたものが有用であった試しなど、歴史上存在していない。
それも当然だろう。「切り札」などというものを温存していることに意味があるのは、カードゲームまでだ。大概の場合、切り札、最強のカードは最初に使うべきなのだ。
切り札で先制攻撃。準備の整っていない相手を叩き、戦意を挫く。先述の初歩の初歩。
もっとも、目の前の化け狸が「切り札」に相応しいとも、パチュリーには思えなかったのだが。
寺の一角、パチュリーの視線の向こうで、マミゾウが童に苦闘していた。
「こりゃ、もう暗くなり始める頃じゃ。子供は家に帰っておねむの時間じゃぞ。飴玉でもくれてやるから飴でもしゃぶって帰りなさい」
寺は里よりほど近い。子供が気楽に訪れることも出来る。とはいえ、灯も暮れれば里の外はやはり魑魅魍魎の闊歩する世界ではある。
寺に居候しているという化け狸が、子供を帰そうとするのもまた、道理だ。
「飴玉なんて僕いらないよ」
しかし、子供らしい反抗心か冒険心か、どうにも言うことを聞かない。
これが紅魔館だったら門番とメイド総出でひねり出すところだったが。
「まったく、レミィはどうしてこんなのに『ただものではないわね』なんて言ったのかしら」
空は赤から黒へと変わろうとしている中で、パチュリーは一人ごつ。寺を参った者達も、殆どが帰っていた。パチュリーもその流れに加わろうとする。その時だ。
「しょうがない、特別じゃぞ。お姉さんとお前だけの秘密じゃ」
マミゾウがそう言うや否や、人形が彼女の手元にあった。よくわからないデザイン。外の世界の何かを模しているのだろうか? 彼女は外の世界にずっといたんだし。とパチュリーは思った。
「本当に? いいの? 返さないよ」
「うむ。よかろう。ただし親の言うことを聞いて、よい子にしているんじゃ。もし破ったら入道の鉄拳が飛んでくるぞい」
「わかったよ。おばあちゃん!」
「おばあちゃん!? 儂は若いぞ! 最近の若者には見る目が無いの。お姉さんと呼びなさい。次におばあちゃんと呼んだら、そのロボットがお前さんに天誅を下すからな」
化け力だろう。パチュリーからみても本物そっくりに見えるのは流石ではある。でもしょせんはまがいもの、幻想。ちょっとした魔法で彼女にも容易だ。
――人間を支配していた大妖怪
という噂だった。なるほど、外の世界で生き抜いてきたのだ。ただものではないと思う
。だが、こんな媚びへつらいで生きてなんになろう? とパチュリーは思った。
「ふうん。これが外の世界で生きる術なの?」
「なんじゃ、お前さんは」
「私は――」
パチュリーは簡潔に己を述べた。
「あの洋館の奴らか」
「私達でも、外の世界の力には勝てずここに来た。だから何か参考になるんじゃないかと見に来たけど、時間の無駄だったわね。本の一冊でも読むべきだったわ」
「けんか腰ややつじゃな。そりゃあ負けるわ」
カラカラ、というようにマミゾウは笑う。
「なるほど。あなたの化け力は大したものだわ。人間に見れば、葉っぱもお金。石ころが財宝で貢ぎ物にも見えるでしょう。そうやって尻尾振ってれば生きていけるわね」
「うむ。尻尾は儂のちゃーむぽいんとじゃ。目の付け所がよいぞ。じゃが、一歩足らん」
「何が?」
「そもそもじゃ、人間に勝つとはどういう事じゃ? 蝙蝠軍でも率いて戦うのか?」
「まさか。そうねえ。恐怖で包み込むってところ? レミィ。私の親友はそう言ってたわ」
「本当に頭が悪いの。だから儂と違って生きていけんのじゃ」
マミゾウは古い書物を例に出して、
「戦争は下の下策と昔から言う」
「孫子曰くね。馬鹿にしないで」
「それじゃよ。儂は尻尾がちゃーみんぐで、子供からは綺麗なお姉さん」
「あんた今おばあちゃんと――」
「だまらっしゃい。で、佐渡一番の人気者。神として崇められるほどじゃった」
と言われて、パチュリーはレミリアを思い出した。端から見ても我が儘で酷い性格だと思うが、どうにも引かれてしまう。
「儂がいればみんなにっこりじゃよ。離れたくない等々心服する程じゃ」
「自称でしょ?」
「事実じゃが、まあいい。ともかくそれが勝つと言う事じゃ。儂を求める、化かすなら化かし通しみんなにっこり。これじゃのう」
「……」
幻想郷。人と妖怪が共存する世界。元はと言えば紅魔館もそれで――追われないと来たのだ。
それを誰よりも体現した彼女。なるほど切り札かもしれない、少しだけパチュリーは思った。
2012-02-12 23:43:25 かぼちゃ@参加:よろしくお願いします
2012-02-12 23:43:28 I・B@参加:53分まで
2012-02-12 23:43:30 アン・シャーリー@参加:マミゾウさんはかわいい
2012-02-12 23:43:45 アン・シャーリー@参加:パチェもかわいい
2012-02-12 23:43:46 かぼちゃ@参加:話し方を考えるのが存外に大変
2012-02-12 23:43:51 生煮え@参加:マミゾウさんが、らしくて良かった
2012-02-12 23:44:01 葉月(参加):こういうマミゾウさんが読みたかったんだよ
2012-02-12 23:44:06 I・B@参加:幻想郷への生き方として、ああなるほど、マミゾウさんらしいなぁと。
2012-02-12 23:44:21 アン・シャーリー@参加:マミゾウさんがいればみんなにっこりじゃよ
2012-02-12 23:44:44 かぼちゃ@参加:別にこれはパチェじゃなくていいだろは反省材料
2012-02-12 23:44:52 かぼちゃ@参加:でも僕の目にはマミゾウしか見えなかったんだ
2012-02-12 23:44:55 アン・シャーリー@参加:おばあちゃんほんとかわいい 高性能 カリスマ かわいい
2012-02-12 23:44:59 葉月(参加):んー
2012-02-12 23:45:00 葉月(参加):そこは
2012-02-12 23:45:11 葉月(参加):反省点でもあり、武器でもある、と感じました
2012-02-12 23:45:14 アン・シャーリー@参加:頭でっかちなところが、パチェでよかったと思う
2012-02-12 23:45:32 I・B@参加:在り方の違うレミィを引き合いに出して、切り札論。良いな、とw
2012-02-12 23:45:41 葉月(参加):こういう作りなら、他の誰でも作れそうだし
2012-02-12 23:46:03 葉月(参加):その上でそのキャラである必然性を付与できれば、ナイスオンリーワン
2012-02-12 23:46:04 アン・シャーリー@参加:>元はと言えば紅魔館もそれで――追われないと来たのだ。
2012-02-12 23:46:06 生煮え@参加:マミゾウさんが子供にあげた物は、結局何だったのです?
2012-02-12 23:46:15 アン・シャーリー@参加:これは何て書きたかったんでしょう
2012-02-12 23:46:27 I・B@参加:パチェである事に違和感を感じはしなかった、というのも強いですかね。
2012-02-12 23:47:01 かぼちゃ@参加:紅魔館もそれ(人間に幻想とされない、脅威を与えられてい)で
2012-02-12 23:47:14 かぼちゃ@参加:くらいですかね。時間に追われてので酷い文に
2012-02-12 23:47:20 葉月(参加):物語というよりは、1シーンですね
2012-02-12 23:47:40 アン・シャーリー@参加:いや、「追われないと来たのだ」がなんかよく……
2012-02-12 23:47:40 かぼちゃ@参加:吸血鬼は幻想入りした中でも、マミゾウ健在だったみたいなイメージで
2012-02-12 23:48:08 かぼちゃ@参加:(人間に敵だと)追われないと見て貰えれば
2012-02-12 23:48:20 生煮え@参加:なるほど
2012-02-12 23:48:40 アン・シャーリー@参加:人間に追われないと考えて来たのだ
2012-02-12 23:48:51 アン・シャーリー@参加:ということかしら
2012-02-12 23:48:54 かぼちゃ@参加:ですね
2012-02-12 23:49:04 I・B@参加:おお、なるほど
2012-02-12 23:49:12 アン・シャーリー@参加:すいませんこれはちょっと「??」となりました
2012-02-12 23:49:15 かぼちゃ@参加:マミゾウは人間と共存。吸血鬼は支配するイメージで
2012-02-12 23:49:45 I・B@参加:他にないようでしたら、次ぎに行きましょう
2012-02-12 23:50:13 かぼちゃ@参加:アンさんの「??」はその文ですか?
2012-02-12 23:50:39 アン・シャーリー@参加:その文の意味がとれなかったという意味ですね
2012-02-12 23:51:16 かぼちゃ@参加:まず「それ」が何をさすか謎の文でした
2012-02-12 23:51:20 アン・シャーリー@参加:えっなんか使い方まちがってる? とか思ったが……僕だけかしら
2012-02-12 23:51:34 ROM専:悪くなかったけれど、もう少し丁寧に書けば活きる話かなと思いました。
2012-02-12 23:51:41 かぼちゃ@参加:いや、最後は時間に追われて適当にやったので、これは日本語が不自由
2012-02-12 23:52:16 かぼちゃ@参加:マミゾウが後半蕩々と語るだけになってしまってるのは雑ですね
2012-02-12 23:52:21 生煮え@参加:その文は、なんかニュアンスでなんとなく解釈してました
2012-02-12 23:52:43 I・B@参加:では、そろそろ