「暑い」
博麗神社の縁側で、アリスはぽつりと呟いた。
「暑い暑いと思うから暑いのよ」
それに、隣に座る霊夢は気怠げに言い放つ。赤土をじりじりと焦がす陽光は打ち水では和らいでくれず、霊夢は水撒きなど早々に諦めて柄杓を地面の上に投げ捨てていた。
「暑いと思わずにはいられないわ。なんとかしてよ」
「あんた、正確違うくない? いつものお姉さんキャラはどこへやったのよ?」
「良いの。都会派だから」
「気紛れ、でしょ?」
「そうとも言うわ」
霊夢はわざとらしくため息を吐くと、アリスを横目で見る。その視線に気が付くと、アリス派きょとんと首を傾げた。
「なによ?」
「いや、あんたも成長したわよね」
「当たり前じゃない。都会派だもの」
「前は、そんな冗談言わなかったわ。いつでもどこでもお姉さんキャラ」
「そんな日々もあったわねぇ」
「お婆ちゃん」
「うるさい」
しみじみと言うアリスに、霊夢は小さく笑いながらからかう。するとアリスは拗ねたように霊夢から顔を逸らしてしまうので、霊夢は肩を竦めて息を吐いた。
「暑いわね。アリス、お茶が欲しいわ」
「自分で淹れなさいよ」
「わかってて言ってるでしょ」
「もちろん」
アリスが笑顔で頷くと、霊夢もまた笑顔を返す。ただし、霊夢の中指は天を突くように立っていたが。
「はいはい、やるわよ」
アリスが指をぱちんと鳴らすと。人形たちがどこからともなく現れて、台所の方へ飛んでいく。
「出不精ね」
「あら。アウトドア派よ。現に、この暑いのにここに居るじゃない」
「じゃあ、怠け者」
「魔法使いなんてそんなものよ。だいたい、霊夢だってそうじゃない」
「私は良いのよ」
「自由ね」
「自由よ。アリスもどう?」
「私は遠慮しておくわ。まだ、自立人形も完成してないし」
アリスが肩を竦めて見せると、霊夢はどこか残念そうに笑う。けれどそれも一瞬のことで、直ぐに気怠げな表情に戻った。
すると、ちょうどそのタイミングで戻って来た人形たちが、霊夢の前に麦茶を置く。
「私、熱い方が好きなんだけど」
「貴女はそれでも問題ないでしょうけれど、私は違うの。いくら魔法使いでも身体をこわすわよ。夏は、冷たい麦茶。これに限るわ」
霊夢は不満げにお茶を見ると、あからさまに肩を落としてみせる。そんな霊夢を見もせずに、アリスは冷えた麦茶を煽った。
「――さて、そろそろ行かなくて良いの?」
一気にお茶を煽ったアリスを見て、霊夢は不意にそう零す。
「魔法の森で、待ってるんじゃない?」
そう続けると、アリスは小さく笑って首を振った。
「良いのよ。あの子のことだから、お線香だけじゃ我慢出来ずにこっちに来るわ」
「まぁ、それもそうね。というか貴女も律儀ね。わざわざ線香焚いてくるなんて」
「都会派だからね。それよりも、霊夢こそ良いの? みんなに挨拶して回らなくて」
「良いわ。来たければ来るでしょ」
アリスは動こうとしない霊夢を見て、吹き出すように笑う。それに釣られて、霊夢も笑い声を上げた。
「それなら、ゆっくりすれば良いわね」
「そうそう。一年に一度だけの機会、ゆっくりとしなきゃ損よ、霊夢」
「まったくだわ」
ひととおり笑い終えると、アリスは霊夢を見て、それからゆっくりと立ち上がる。
「さて、貴女にもお線香、あげるわね」
「そういえばまだだったわね。お願い」
「ふふっ、どういたしまして」
アリスが黒塗りの仏壇の前に立ち線香を立てる。すると、霊夢はその後ろ姿にどこか愛おしげに微笑みかけた。
「前は、あんなに張り詰めていたのに、本当に成長したわね、アリス」
「当たり前よ。念に一度しか逢えないあなたたちの為に泣き腫らして暮らすなんて、都会派じゃないもの。だから――安心して、ゆっくりしていきなさい」
「ええ、そうするわ」
仏壇に立てられた線香から、白い煙が立ち上り、陽光の中に消えていく。霊夢がその先を目で追うと。空に白黒の姿が見えた。
「我慢できなかったわね、魔理沙」
霊夢がその姿を認めると、いつの間にか隣に立っていたアリスがぽつりと呟いた。
「さ、出迎えましょう、霊夢」
「ええ、そうね」
縁側から手を振ると、空の上から魔理沙が手を振り返す。
夏の日。かつて生きた者達が戻ってくる、年に一度の行事。
お盆の日のことだった。
了
『なつのひ』 I・B
I・B(参加)@司会 (2012-07-30 23:38:29)
(23:48まで)
I・B(参加)@司会 (2012-07-30 23:38:33)
お願いします!
這い寄る妖怪(参加) (2012-07-30 23:39:01)
一番ベタだった。
銀狐夜々@参加? (2012-07-30 23:39:02)
魔理沙、死亡率高いよね
アン・シャーリー@参加 (2012-07-30 23:39:16)
なんで魔理沙ちゃん死んでしまうん
かじつ (2012-07-30 23:39:27)
なんとなく、ばかのひさんを思い浮かべた タイトル
Ministery (2012-07-30 23:39:31)
魔理沙ちゃんまじメメントモリ
I・B(参加)@司会 (2012-07-30 23:39:31)
w
這い寄る妖怪(参加) (2012-07-30 23:39:39)
よく爆発しろって言われるから<なぜ死ぬ
I・B(参加)@司会 (2012-07-30 23:40:04)
人間勢オール死に
アン・シャーリー@参加 (2012-07-30 23:40:05)
リア充だからか……
銀狐夜々@参加? (2012-07-30 23:40:10)
ところで、幻想郷、お盆でなくともしょっちゅう死者があるいてますが……
かじつ (2012-07-30 23:40:10)
掛け合いが若干飛んでいる印象?
I・B(参加)@司会 (2012-07-30 23:40:25)
行間が足りない、です?
銀狐夜々@参加? (2012-07-30 23:40:30)
言うだけ野暮ですか
かじつ (2012-07-30 23:40:32)
「自分で淹れなさいよ」「わかってて言ってるでしょ」
かじつ (2012-07-30 23:40:37)
とか、この辺り。
這い寄る妖怪(参加) (2012-07-30 23:40:46)
半ば辺りでだいたい展開が読めたのは惜しい。
Ministery (2012-07-30 23:41:05)
成長を意識しすぎた感はある
銀狐夜々@参加? (2012-07-30 23:41:25)
逆に展開がわかるが故の安心感もあるけれど、ベタは
アン・シャーリー@参加 (2012-07-30 23:41:31)
魔理沙が飛んでくるから悲壮感はないね それがいいところでもあり、悪いところでも……といったかんじ
Ministery (2012-07-30 23:41:43)
そこまでもっていくのに流れがごたごたしている感じ
I・B(参加)@司会 (2012-07-30 23:41:54)
もっと短くて良かったか
Ministery (2012-07-30 23:42:35)
魔理沙飛んでこなくてもよかったんちゃう?
アン・シャーリー@参加 (2012-07-30 23:42:49)
会話ちょっと唐突なのはたしかに
這い寄る妖怪(参加) (2012-07-30 23:42:59)
成長してるのだろうか、これは。
アン・シャーリー@参加 (2012-07-30 23:43:35)
しかし今回の作品のなかでいちばんちゃんと「お話」してると思う
アン・シャーリー@参加 (2012-07-30 23:43:53)
評価したい 自分がだめだっただけに
這い寄る妖怪(参加) (2012-07-30 23:44:23)
アンさんはポエムよりですよね。
かじつ (2012-07-30 23:44:30)
今回のお話は全体的に
アン・シャーリー@参加 (2012-07-30 23:44:40)
ポエマーですね
銀狐夜々@参加? (2012-07-30 23:44:41)
行間とかもっと書き込めば、もっと良くなりますね
I・B(参加)@司会 (2012-07-30 23:44:43)
会話に無駄があったか。
かじつ (2012-07-30 23:44:48)
読んでいて、読者をどの時点で惹きつけるつもりなのかなーと思うのが多かった気がする
I・B(参加)@司会 (2012-07-30 23:44:57)
ふむふむ
かじつ (2012-07-30 23:45:15)
先を読みたいという気にさせる仕掛けでも展開でもいいんだけど、どこを狙っているのかな、と。
Ministery (2012-07-30 23:45:25)
惹きつけるっていうのもいろいろあるからね
Ministery (2012-07-30 23:45:40)
アンさんみたいに読んだ後に惹かれたことに気づく文もある
RingGing@参加 (2012-07-30 23:45:48)
魔理沙って何となく(幽々子のごとく)居座るイメージあったから、そうか逝くのかーって思いました
アン・シャーリー@参加 (2012-07-30 23:45:56)
僕は一行目の無理矢理感で「あ、こういうものなんだ」と納得していただきたかった
かじつ (2012-07-30 23:46:03)
むりやり感w
銀狐夜々@参加? (2012-07-30 23:46:30)
ああ、なんとなく判る。無理矢理感w
Ministery (2012-07-30 23:46:34)
それはギャグのみが許されるような気がしないでもない
アン・シャーリー@参加 (2012-07-30 23:46:36)
「お題消化!」という(笑)
I・B(参加)@司会 (2012-07-30 23:46:44)
じわじわと「あー、死んだかー」って思っていただければ。コンセプトは悲壮感の無い死ネタ
かじつ (2012-07-30 23:46:53)
それはちょっとごり押しっぽくて面白かった >アンさんの
這い寄る妖怪(参加) (2012-07-30 23:47:21)
話を戻して、これアリスさんは進んだんじゃなくてゼロに戻ったって話ですよね。
Ministery (2012-07-30 23:47:51)
まっすぐ地球一周、みたいな
かじつ (2012-07-30 23:48:00)
アリスがしみじみと都会派だと思いました(小並感)
I・B(参加)@司会 (2012-07-30 23:48:06)
見栄張らなくなったから進んだんだよ! って一文入れるのわすれry
這い寄る妖怪(参加) (2012-07-30 23:48:22)
「次の一歩」が見えづらかったのが惜しい。
I・B(参加)@司会 (2012-07-30 23:48:25)
よし、そこまで
Amazing data, Thanks.
https://essaywritingservicelinked.com/ homework for preschoolers
You said it very well.!
<a href="https://essaywritingserviceahrefs.com/#">essaywritingserviceahrefs.com</a> non dissertation phd
https://essaywritingservicelinked.com/ university of michigan dissertations
I do not even know how I ended up here, but I thought this post was great. I do not know who you are but certainly you are going to a famous blogger if you are not already ;) Cheers!
<a href=https://essaywritingservicebbc.com/#>https://essaywritingservicebbc.com/</a>
https://essaywritingservicelinked.com/ scholarship essay writing service
Helpful postings. Thanks!
<a href="https://essaywritingserviceahrefs.com/#">essaywritingserviceahrefs.com</a> thesis writing service reviews
Thank you! Numerous posts.
custom dissertation writing service <a href=https://essayservicehelp.com/>cheap research paper writing service</a> buy essay online writing service
ib extended essay writing service <a href="https://essayservicehelp.com/">writing a memorial service program</a> best writing service discount code