なにかがおかしかった。
境内の掃除を終え社務所に帰ってくると、魔理沙とアリスが炬燵で丸くなっていた。
いつの間に来たんだかさっぱり気づかなかったわけだけれど、別にそれはおかしいことでもない。ごく日常的なことだ。
アリスが来るのは少し珍しいけど、顔なじみなわけだし、魔理沙に至っては来ない日を数えたほうが手っ取り早いほど頻繁に訪れるわけで。
「おう霊夢、お掃除ご苦労」
「別にあんたのためじゃないけどね」
「お邪魔してます」
丁寧にお辞儀するアリスに会釈を返し、台所に向かう。
「二人ともお茶でよかったわよね。お茶しかないけど」
「珈琲で頼む」
「あるわけないでしょ。飲みたかったら珈琲豆持ってきなさ……」
薬缶を火にかけようとして手を止める。なんだろ? ほんの些細な違和感のような。
違和感は徐々に確かなものになり、私は後ろを振り向いた。
「きゃっ!」
「え、アリス?」
振り向いたすぐ近くにアリスの驚いた顔があった。近すぎて私が驚きたいくらいだ。
「あの、お手洗いどこかしら」
「……廊下の突き当たりの左側」
暗い廊下を指差すとアリスは気まずそうにそちらに向かう。うちにはけっこう来てるはずなんだけど、お手洗いの場所知らなかったのかしら?
しばし考え込んで記憶を手繰るも、そんなことよく覚えていない。
ただ居心地の悪い違和感だけが残った。
なにかがおかしい。
三人分のお茶をお盆に載せて居間に帰ると、魔理沙がバタバタと炬燵に戻るところだった。
「……なにやってるのよ」
「えっ、なにって本を読んでるんだぜ」
確かに魔理沙の様子は本を読んでいるとしか言いようがないものだった。炬燵の前に正座して背筋を伸ばし、掲げるように分厚い本を目の高さに持っていた。
古びた本の表紙にはキリル文字だかラテン語だかわからないけど、仰々しい変な文字が書いてある。きっと本のタイトルだろう。その仰々しい文字は表紙の下側にあった。
「逆よ」
「へっ!?」
「その本、上下が逆。それじゃ読みにくいでしょ」
私の指摘に魔理沙はあわわと慌てふためくが、すぐに諦めたのか本を閉じてお茶を一口。
「お茶が旨い!」
「いつも通りの出涸らしよ」
「いやその出涸らしがいいんじゃないか、アリスもそう思うだろ」
「え? えぇそうね」
ちょうどお手洗いから帰ってきたアリスに、縋るような目付きを向ける魔理沙。
不自然に視線を逸らすアリス。
やっぱり、どう考えてもおかしい。
「あんたたち、なにか企んでるでしょ?」
「えっ!? な、何でも無いぜ。なぁ」
「そうそう、そんな企むなんてそんな」
「……ふーん」
誤魔化す様が余計に怪しいのだけれど、追求して白状するものでもないか。なにか問題が起こったら、その時にじっくり問い質せばいいのかも。
目配せしあう二人を前に、私は違和感を棚上げすることにした。
怪しい魔法使い二人組の企みが何だったのか、私はそれを二日後に知ることとなる。
「おめでとう霊夢」
「……はぁ!?」
予告なく来た魔理沙とアリスから、唐突にリボンの付いた包みを渡された。
「なに、これ」
「誕生日なんだぜ」
「誰の?」
にやけ顔の魔理沙にビシッと指を射されてしまった。
「ほら、霊夢って誕生日が不明だったでしょ?」
「うん、まぁそれは」
「だから初めて会った日を誕生日にしちゃいましょうって、魔理沙が」
歌うように、アリスが告げた。
たしかにみなしごだった私には誕生日が無い。それで困ることはないけど、誰かにお祝いされることもない。
別にそれで不満は無かったのだけれど、けど。
だからって初めて会った日を誕生日にしようだなんて、それは魔理沙の身勝手すぎるんじゃないかと、少しだけ思う。
「ずいぶん自分勝手ね」
「ああ、私が祝いたいから、私が勝手に祝うんだ」
「プレゼント、開けてみて」
自分勝手に手渡されたプレゼントの包みを開く。
中から出てきたのは、淡い紅色のドレスだった。
「私のお古で悪いけど値打ち物だ。質は保証するよ」
「霊夢に合うように仕立て直したから。内緒で採寸するのに苦労したけど」
アリスは悪戯っぽく舌を出して笑った。
得意気な魔理沙につられて、いつのまにか私も笑っていた。
了
U.N.owenさんから「喜び」
這い寄る妖怪さんから「霊夢」「魔理沙」
制限時間 60分
生煮え
生煮え氏 『贈り物』
I・B@司会(参加) (2013-05-02 23:13:54)
どん
I・B@司会(参加) (2013-05-02 23:14:01)
21分まで
I・B@司会(参加) (2013-05-02 23:14:21)
22分まで、だw
ライア(参加) (2013-05-02 23:14:36)
物語はスタンダード
I・B@司会(参加) (2013-05-02 23:15:00)
ええっと、普通。
Ministery@参加 (2013-05-02 23:15:04)
話の流れがよく見えなかったのだが
這い寄る妖怪(参加) (2013-05-02 23:15:13)
極個人的な意見を言うと、最後の一行を削ったほうが良かったと思う。
I・B@司会(参加) (2013-05-02 23:15:28)
普通って言い方もおかしいな。ううむ
U.N.owen(参加) (2013-05-02 23:15:30)
何も言えない。
見てる人@見学 (2013-05-02 23:15:45)
これはちょっとよくわかりませんでした、ごめんなさい。
かじつ@見てる感じ (2013-05-02 23:15:59)
採寸していた,という話では?
U.N.owen(参加) (2013-05-02 23:16:07)
アリスがですね
かじつ@見てる感じ (2013-05-02 23:16:15)
あるいは霊夢の服を魔理沙がちょろまかしたか測ったかで
かじつ@見てる感じ (2013-05-02 23:16:23)
ドレスを作るためにね。
生煮え(参加 (2013-05-02 23:16:30)
そんな感じです
U.N.owen(参加) (2013-05-02 23:16:44)
物語自体分かりやすくて展開も王道な感じだったので
見てる人@見学 (2013-05-02 23:16:46)
すると、どこからそれを読み取ればいいんでしょうか?
Ministery@参加 (2013-05-02 23:16:53)
細かすぎて伝わらないモノマネっぽいもどかしさ
U.N.owen(参加) (2013-05-02 23:16:59)
何も言えない
I・B@司会(参加) (2013-05-02 23:17:17)
全体的にさらっと流されているので、も語りが
I・B@司会(参加) (2013-05-02 23:17:22)
物語が
かじつ@見てる感じ (2013-05-02 23:17:22)
どこからというとアレだけど,まあ贈り物だしドレスだしね。サイズ測ったからふたりは不自然な行動を取っていたんじゃないかとも。
I・B@司会(参加) (2013-05-02 23:17:30)
平坦に見える
Ministery@参加 (2013-05-02 23:17:43)
序破急がわかりにくいのはあった
這い寄る妖怪(参加) (2013-05-02 23:18:14)
霊夢さんが喜んでる直接描写は無いほうが、喜びの話としては完成度が上がったのではないか、と。
見てる人@見学 (2013-05-02 23:18:16)
あと、どこが楽しみどころなのかなというのが。
U.N.owen(参加) (2013-05-02 23:18:19)
霊夢に内緒でプレゼント用意するために、ドレスの採寸とかを頑張って悟られないようにやってたって話
かじつ@見てる感じ (2013-05-02 23:18:37)
まりさとアリスとれいむかわいい(真)
生煮え(参加 (2013-05-02 23:18:53)
なるほど >直接描写は無いほうが
のんびりと@見学 (2013-05-02 23:20:13)
山、というか良くも悪くも引っ掛ける部分が少なかったのかなぁ。
見てる人@見学 (2013-05-02 23:20:16)
すいません、どうもピンと来なくて・・・
這い寄る妖怪(参加) (2013-05-02 23:20:24)
あとがきでテーマ見て、読みなおして、「あー霊夢さん喜んでるんだ」ってニヨニヨする。そういう話かと
かじつ@見てる感じ (2013-05-02 23:20:38)
やや駆け足だったかなとは思います。
這い寄る妖怪(参加) (2013-05-02 23:20:52)
いや、見てる人氏の意見は興味深いですよ。
Ministery@参加 (2013-05-02 23:20:57)
なんか文体で面白くなりそうな感じがするんだけれどなあこれ
生煮え(参加 (2013-05-02 23:21:13)
書きながら、ああこれ60分じゃあ無理だと後悔しながら
かじつ@見てる感じ (2013-05-02 23:21:18)
詰め込み過ぎというのとは逆で,これは枠組み自体は変えずに中身をもっと充実させたらもっとよくなったのではと。
Ministery@参加 (2013-05-02 23:21:46)
しかし じかんが たりなかった
I・B@司会(参加) (2013-05-02 23:22:20)
何分に設定しようと足りないもの。それが時間。
かじつ@見てる感じ (2013-05-02 23:22:35)
少なくとも何をやりたいかはわかったので,これはこれで好きですよ。
I・B@司会(参加) (2013-05-02 23:22:38)
ということで、ここらでいったん区切り。
I・B@司会(参加) (2013-05-02 23:22:45)
次ぎに行きます。
生煮え(参加 (2013-05-02 23:22:56)
ありがとうございました