トン、と机を叩く音が響く。
静寂が支配するこの空間の中でその音はやけに大きく響いた気がするが、それでも私はそれを無視して本のページをめくる。
「…………」
トントン、と今度は二回机を叩く音が響いた。
多分飽きてかまってほしくてやっているのだろうけど、私にはどう反応すればいいのかが解らない。
対処法は本にものっていない。だから手っ取り早く無視を決め込む。
「ぷぅー……」
しばしの沈黙のあとで今度は机を叩く音ではなく、そんな変な音が響いた。
視線を向けると不服なのか、口を膨らませてつまらなそうに息を吐く彼女の姿が目に映った。
貸し与えた絵本はどうやらお気に召さなかったのだろう。
今回私には何の落ち度もないのだが、何故だか罪悪感を感じた。
小さい子供というのはその辺り卑怯だと思う。
何せ、そんなつまらなそうな顔をされるとこちらが悪い事をしている気分になるからだ。
「……霊夢?」
私の声に目の前の少女がぱっと笑顔になる。
ああ、おかしい。本当におかしい。目の前にいるのは推定年齢で3、4歳くらいの霊夢なのだ。
普段の落ち着いた雰囲気の彼女と違い、今の霊夢は年相応に好奇心盛んで活発な少女のようだった。
「退屈なのは解ったけど、もう少しだけ我慢してね、今魔理沙に薬の材料集めてもらっているから」
だからだろう。遊んでもらえると期待したのか、その言葉を聞いて彼女の、霊夢の表情が曇って、またつまらなそうに口を膨らませた。
また、罪悪感が私を苦しめる。
ああ、本当にどうしてこうなったのだろう?
◆
『霊夢が小さくなった!!』とそう言って魔理沙がこの大図書館に文字通り飛び込んで来たのが今から数刻前、その時には魔理沙の言う通り霊夢は今の姿になっていた
何がどうなってこうなったのか? 理由を尋ねると『霊夢に茸を食べさせたらこうなったんだ』なんて簡潔な答えが返ってきた。
あの森の茸を食べさせようとする方もする方だが、食べた方も食べた方だ。魔法の森の茸なんて変な魔力を帯びているせいで稀に変な魔法が発動する事がある。
目の前の小さな霊夢がいい例だ。 むしろあの森の茸を食べて幼児化ですんだのはむしろラッキーなのかもしれない。
「まぁ、見ての通り霊夢が小さくなったわけだが、どうすれば戻る?」
なんと言うか飛び込んできた当初は大分焦っていた様に見えたが、今は幾分落ち着いているようだった。
焦っても無駄と判断して開き直っているのだろうか?
解っていたが、なんとも図太い神経の持ち主だ。
「とりあえず、どんな茸を食べさせたの?種類さえ解れば解毒剤も……、ってこら本あさるな!」
◆
非常にマイペースな魔理沙をそのままにしておくと霊夢そっちのけで本を盗難しそうだったから、早々に食べさせた茸の種類を聞きだして、さっさと解毒剤の材料を持って来いと追い出した。
その時、霊夢は流石に置いて行かせた。 今の霊夢からは普段感じるような霊力を感じない、なんと言うかあまりにも無防備だった。
そんな霊夢をどうこうさせては危険と判断したのだが、正直持てましていた。
普段から子供のような友人の相手をしているが、正直ここまで小さくはないし、何故だが霊夢は先ほどから一言も喋らない。
緊張しているのか、こちらを観察するように見てくる。 じっとしている分にはこちらに何かしらちょっかいを出すのに、いざ会話しようとすると黙ってしまう。
会話による意思疎通が出来ないとなると、もうどうしていいか解らなかった。
だから子供用の絵本を小悪魔に持ってきてもらって数冊与えてみたのだが、ものの数分で飽きてしまったようで、現在に至る。
「……えっと、本。面白くなかったかしら?」
私の問いに霊夢は顔を俯けた。 相変わらず声を出さないが、肯定、と取っていいだろうか。
「……何が気に入らなかったかしら?絵が嫌だった?」
私の言葉に霊夢の体がビクッと震えた。 そんな気はなかったが怯えさせてしまったようだった。
さて、こんな時どうすればいいのだろうか? もしも小悪魔がここにいてくれれば対応は出来たかもしれないが、先ほど絵本の追加をお願いしてしまったから彼女の姿は近くには無い。
「…………」
知識の宝庫である大図書館でも、子供には勝てぬという事なのか?
だから、考えた。
記憶を探った、滅多に外にでないがそれでも外に出たとき、新米の妖精メイド相手に咲夜が美鈴がどう対応していたのか? その姿を思い出す。
答えは割りと早く出てきた。 簡単な事だった。
私は席から立ち上がると本を持って俯いたままの霊夢の前でしゃがむ。 そして視線をなるべく近づけて出来るかぎり優しい声色で話しかけた。
「霊夢? 何がつまらなかったか教えてもらえない? 喋ってくれなくちゃ解らないもの、だからお願い、ね?」
自分なりに優しい声色で優しい笑みを浮かべたと思う。 そしてその私の思いはどうやら霊夢にも届いてくれたようだった。
本当にか細い、気をつけて聞かなければ聞こえない程小さい声だったのだが、確かに彼女は言った。
『なんてかいてあるのかわかんないから……』
ああ、盲点だった。もっとも単純な事だった。
H2Oさん 『本を読んであげましょう』
I・B@司会(参加) (2013-06-07 23:31:41)
どん!
H2O(参加) (2013-06-07 23:31:44)
お願いします
H2O(参加) (2013-06-07 23:31:49)
※未完
haruka(未定) (2013-06-07 23:31:53)
続編はよ
H2O(参加) (2013-06-07 23:32:15)
続きはもう言っちゃった方いいだろうか?
かじつ(見) (2013-06-07 23:32:26)
初参加ということは有情に斬るべきかしら
I・B@司会(参加) (2013-06-07 23:32:26)
(なんか結局全員10分間講評やってるので、このまま残りも10分で行きます。ということで41分まで
這い寄る妖怪(参加) (2013-06-07 23:32:43)
え、これは落ちてません?
I・B@司会(参加) (2013-06-07 23:32:44)
ずんばらりんと斬るのですね
ライア(参加 (2013-06-07 23:33:15)
タイトル的には、このあとパチュリーが霊夢に本を読み聞かせる感じだったのかなと
I・B@司会(参加) (2013-06-07 23:33:27)
ショートストーリーとして見るなら、これで終わりならそれでも大丈夫そうな感じ。
H2O(参加) (2013-06-07 23:33:28)
切れるけども、本当はもうちょっと続くんじゃ、その通りなんです
ライア(参加 (2013-06-07 23:33:35)
かじつさんのそれは有情破顔拳じゃ
ぴす(参加) (2013-06-07 23:33:57)
個人的には、すっごく子供に対する言葉で霊夢にパチュリーが接してたら、急に元に戻って
ぴす(参加) (2013-06-07 23:34:08)
何してんの? 的な流れが個人的に好み
かぼちゃ(参加) (2013-06-07 23:34:09)
お題を念頭に置かない場合、誰が語っているのか最初の段落で把握しにくい感はありました
かじつ(見) (2013-06-07 23:34:46)
破顔とな
かじつ(見) (2013-06-07 23:34:49)
個人的には
かぼちゃ(参加) (2013-06-07 23:34:55)
本を読む行為だと、パチュリーは確かにそうだけど一般的行為でもあるので
這い寄る妖怪(参加) (2013-06-07 23:34:57)
パチュリーをママって呼ぶようになるまでの大長編はよ
I・B@司会(参加) (2013-06-07 23:35:08)
キャラクタがころころしていて可愛らしい。というか、可愛らしいキャラクタをよく書けてる。つまり可愛い。
かじつ(見) (2013-06-07 23:35:12)
幼霊夢と組み合わせる相手としてパチュリーを選んだのがポイント高い
かじつ(見) (2013-06-07 23:35:22)
とはいえ,今夜はキャラ指定から組んだのだったかな
I・B@司会(参加) (2013-06-07 23:35:31)
ですね。
ぴす(参加) (2013-06-07 23:35:47)
もしくは膝の上に乗せて読ませてたら戻って、「重い」 「あなたよりは軽いわ」的なね
かじつ(見) (2013-06-07 23:35:50)
では,そのキャラを指定されてこのシチュエーションを選んだのがポイント高い,に変えておく。
H2O(参加) (2013-06-07 23:36:00)
霊夢とパッチェさんどうしていいか解らなかった。幼女にするしかないと思った。
ぴす(参加) (2013-06-07 23:36:09)
そだねー、妄想が膨らむよねー
I・B@司会(参加) (2013-06-07 23:36:10)
ただ、パチュリーと霊夢を絡ませようと考えたとき、ロリ霊夢を持ってきたのは良い感じですよね
ライア(参加 (2013-06-07 23:36:12)
>『なんてかいてあるのかわかんないから……』
H2O(参加) (2013-06-07 23:36:17)
あとやっぱり解り難いか冒頭w
かじつ(見) (2013-06-07 23:36:18)
幼女しか選べない人だったのか……仕方ないね
ライア(参加 (2013-06-07 23:36:20)
こいつ、直接脳内に…
這い寄る妖怪(参加) (2013-06-07 23:36:48)
幼女は正義
haruka(未定) (2013-06-07 23:36:49)
とりあえず気になった点は
haruka(未定) (2013-06-07 23:36:57)
パッチェさんが何で罪悪感感じるのか
かぼちゃ(参加) (2013-06-07 23:37:03)
回想形式で、最初の段落→時系列で冒頭なので、よくわからない状況で始まるのは当然ですが
かじつ(見) (2013-06-07 23:37:05)
冒頭がいまいちわからないというのは言えるかも知れないが
かぼちゃ(参加) (2013-06-07 23:37:23)
魔理沙が大図書館~みたいなのは最初の段落にあってもよかったかもしれません
かじつ(見) (2013-06-07 23:37:29)
引き返す前に状況説明パートに入っているからさほど厳しくはないか
かじつ(見) (2013-06-07 23:37:45)
わかりやすくするならかぼちゃさんがおっしゃるような手も使えますね
H2O(参加) (2013-06-07 23:38:07)
なるなる
かぼちゃ(参加) (2013-06-07 23:38:14)
分量というか、回想に向かうだから状況が不確かなのは当然
haruka(未定) (2013-06-07 23:38:18)
あとパッチェさんは、個人的に、「だから、で?」な感じなので
haruka(未定) (2013-06-07 23:38:31)
とりあえず手を打つにあたっての動機付けとかも欲しかった
haruka(未定) (2013-06-07 23:38:47)
まぁ、これは人それぞれのキャラクター感ですな
かじつ(見) (2013-06-07 23:38:49)
面倒見良さ過ぎるんじゃね? ということかな
這い寄る妖怪(参加) (2013-06-07 23:38:51)
子供を相手にしなきゃならんとなるとこうもなるかとw
かぼちゃ(参加) (2013-06-07 23:39:04)
その上でキャラ含めて二重にぼけていると考えてしまうので、読む手が止まってしまうなとは思いました
かじつ(見) (2013-06-07 23:39:09)
霊夢相手というより魔理沙相手に引き受けたってことだよね,それは。
這い寄る妖怪(参加) (2013-06-07 23:39:13)
普段面倒見悪い人ほど困るんじゃないですかね。
ぴす(参加) (2013-06-07 23:39:21)
魔理沙がぽいっと勝手に置いてって、小悪魔もいないって状況を本文で語っておけば
ぴす(参加) (2013-06-07 23:40:02)
なんとかなるのかーっと思う
H2O(参加) (2013-06-07 23:40:05)
構成不足感が出てしまったか
かぼちゃ(参加) (2013-06-07 23:40:37)
面倒見はそういうキャラ像もあるのだろうですが
かじつ(見) (2013-06-07 23:40:44)
仮にこれを完成した形として出すならどうつなげてどう補強するか,みたいなビジョンがあればいい気もするけれども
かじつ(見) (2013-06-07 23:40:58)
それを説明して頂いているうちに講評時間が過ぎてしまいますね。
かぼちゃ(参加) (2013-06-07 23:41:04)
この作品ではそうだと納得させるフォローはあっていいかもしれません
ぴす(参加) (2013-06-07 23:41:17)
個人的にはパチュリーの無関心さを最初だして
I・B@司会(参加) (2013-06-07 23:41:36)
では、いったんここまで。語りきれない部分は講評後の雑談タイムでー
I・B@司会(参加) (2013-06-07 23:41:42)
では、次。
ぴす(参加) (2013-06-07 23:41:46)
なんにでも興味を持つ子供を、探究する魔女という種族に重ねてちょっと触れてみるとか