頬を撫でる晩夏の風は、まもなく訪れるであろう秋の涼やかさを微かに含んでいた。
神子は目を細め、何気なく髪に手をやる。
千年以上の永きに亘る眠りから覚め、季節は二度ほど廻った。
眠りは気付かぬうちに時を押し流してゆくものだと思っていたが、目覚めてからの日々はそれ以上に目まぐるしく、加速された現代に追いつこうとするだけで精一杯だった。
知らず知らずのうちに、疲れが溜まっていたのだろうか。
こうして何もない丘にひとり佇んでいると、心が穏やかに、澄み渡っていくような感じがする。人々の姿もなく、欲望の声も聞こえて来ない場所を散策するのが、ここしばらくの神子の余暇の過ごし方であった。
「……?」
ふと目をやると、なにやらこちらへ向かってくる少女の姿のようなものが見えた。
人里から遠く離れたこのような場所に、まさか人間がいようとは。そう思ったものの、何かが違う。
これは人間の欲というより――
「――人形、かしら」
「貴方、人間ね?」
少女は非友好的な視線を向けてくる。
神子は軽く笑みを浮かべ、それをかわす。
「聖人だよ」
「セイジン……? 人間じゃない?」
眼前の相手の敵愾心が薄れてゆくのを見てとり、神子は密かに安堵の息を吐いた。
ストレス解消のための散策で、無駄なトラブルを抱えたくもない。深く関わらずに去ればいいのだろう。
とはいえ、人形らしき少女に、神子はどこか惹かれるものを感じた。たぶん付喪神の類の彼女。妖怪変化としての格のようなものもあまり感じられず、おそらくは動きだしてから日が浅い――。
誰かと重なるように思えたのは、気のせいだったのかも知れない。
「君は……」
適当な言葉を探りつつ、神子は少女を“読み取る”。
欲を知り、彼女の資質や未来を見てとるのだ。
「ふむ」
我知らず、神子は自分の耳に手を伸ばしていた。
広大な砂漠のような心。乾いた心象風景が神子のうちに広がった。
暗いというより空っぽな世界に、突き刺すような毒。
人間のように生々しくはない、けれども切実なる何か。
「……」
神子は耳に手をあてたままで僅かの間逡巡したが、ほどなくして口を開く。
「君の話を、聴かせてくれないだろうか」
何かを得ようという気持ちからではなく。
得体の知れないものに突き動かされて、神子は彼女に手を伸ばしたのだった。
~完~
赤衣さんより 「メディスン」
Ministeryさんより 「神子」「砂漠」
時間:50分
かじつ
『渇望の丘』 かじつ氏
I・B@鉄球(司会) (2013-07-07 23:54:26)
どん!
I・B@鉄球(司会) (2013-07-07 23:54:33)
59分まで
つくし (2013-07-07 23:54:37)
これ冒頭だろ 次かけよ おしまい
這い寄る妖怪(参加) (2013-07-07 23:54:55)
壮大に何も始まらない
復路鵜@参加 (2013-07-07 23:55:07)
得体の知れないものって何でしょうね?
Ministery@参加 (2013-07-07 23:55:11)
これは、ちょっと、さっぱりしすぎではないか
H2O(参加) (2013-07-07 23:55:21)
今後の展開とかを期待してしまう
no1255(見学) (2013-07-07 23:55:26)
冒頭だな!
かじつ(参加) (2013-07-07 23:55:37)
いいじゃん
K.M(見学) (2013-07-07 23:55:41)
満場一致で「冒頭」ですかね
つくし (2013-07-07 23:55:42)
神林長平的にいろいろやれよ!!!
かじつ(参加) (2013-07-07 23:55:45)
別に落語とかじゃないんだから落ちてなくてもさー
ライア(文と参加) (2013-07-07 23:55:45)
俺達の戦いはこれからだ!
這い寄る妖怪(参加) (2013-07-07 23:56:05)
かじつさんの場合は普段の言動があるので…w
Ministery@参加 (2013-07-07 23:56:09)
なんていうか、単語の密度が薄すぎる?
這い寄る妖怪(参加) (2013-07-07 23:56:10)
許されないね
かじつ(参加) (2013-07-07 23:56:11)
こういう出会いがあったよ で一区切りついてるじゃん?
no1255(見学) (2013-07-07 23:56:16)
冒頭か、千年前の話のあとの、打切りエンド
百円玉(参加) (2013-07-07 23:56:28)
『砂漠』が心象的な扱い方で面白いと思いました
つくね@鈴仙と参加 (2013-07-07 23:56:31)
うん、確かに一区切りついてますね。一区切りは。
復路鵜@参加 (2013-07-07 23:56:35)
文章をゴンゴン地均しして、さあこれからだ、という感じですか
つくし (2013-07-07 23:56:36)
だから、その後に面白そうな展開を想像させるのにコノヤローって話だよ!
no1255(見学) (2013-07-07 23:56:52)
んー、でもここからどんな展開あるのって
ぴす(参加) (2013-07-07 23:57:00)
一区切りでみればまあいいんだけどさw
Ministery@参加 (2013-07-07 23:57:04)
しかし、逆にこれはこれでこういうの書けって言われても多分書けない
這い寄る妖怪(参加) (2013-07-07 23:57:06)
この切り方が許されるのは石川賢くらいのもの
no1255(見学) (2013-07-07 23:57:08)
そこまでの期待を抱かせるのは、もうちょい・・・ってかんじが
かじつ(参加) (2013-07-07 23:57:13)
その貴方の想像する展開こそがもっとも芳醇なる物語の種であってすんません半端ですね
生煮え(見学 (2013-07-07 23:57:37)
ここで序章が終わって、次から本編なんですね
つくね@鈴仙と参加 (2013-07-07 23:57:53)
砂漠を乾いた心象とするのは綺麗だな、と思いました。
カミソリの値札 (2013-07-07 23:57:55)
ども。
這い寄る妖怪(参加) (2013-07-07 23:58:03)
どもー
H2O(参加) (2013-07-07 23:58:09)
神子とメディの組み合わせを見ないからこそ、今後どうなるのかって期待が一層強く
つくし (2013-07-07 23:58:09)
しかしまぁ 神子とメディという組み合わせの意外さと、なるほどという感じの両方があるからこその感想だよ
かじつ(参加) (2013-07-07 23:58:11)
夏の終わりごろに鈴蘭ってどうなっているんだっけと調べていたらけっこう時間経ってたマン
カミソリの値札 (2013-07-07 23:58:14)
久々ににぎわっていると聞いて。
復路鵜@参加 (2013-07-07 23:58:16)
(あと関係ないんですがメディスンに嫉妬する屠自古さんを見たいと思いました
復路鵜@参加 (2013-07-07 23:58:20)
どうもどうも
かじつ(参加) (2013-07-07 23:58:23)
どうもどうも
Ministery@参加 (2013-07-07 23:58:28)
どうもどうも
ライア(文と参加) (2013-07-07 23:58:30)
どうもどうも
H2O(参加) (2013-07-07 23:58:34)
どうもどうも
カミソリの値札 (2013-07-07 23:58:36)
^^;
no1255(見学) (2013-07-07 23:58:40)
ドーモ
つくし (2013-07-07 23:58:42)
(なにこのダチョウアトモスフィア)
つくね@鈴仙と参加 (2013-07-07 23:58:59)
サツバツとしたなにかを感じる。
Ministery@参加 (2013-07-07 23:59:06)
無限のポテンシャルを秘めておきながら秘めたままというこのもどかしさ
I・B@鉄球(司会) (2013-07-07 23:59:21)
そろそろつぎ
かじつ(参加) (2013-07-07 23:59:32)
ありがとうございましたー。
うるめ@参加 (2013-07-07 23:59:33)
原作でも二次でも絡みなさそうなところをここまで違和感なしに仕上げたのは凄い・