ぱちり、ぱちり。
碁盤の上で、白と黒が入り混じる。
「妖夢、先月のことなんだけれど」
ぱち、と左下に白石を置きながら、幽々子がそう切り出した。
居間に置かれた脚付きの碁盤に、主従が差し向かって座っている。
秋の入り口、午後の白玉楼に人気はない。
聴こえるのはただ、碁盤に打たれる石の音だけである。
声を掛けられた妖夢は、はてどの話か、と思案顔になった。
「西瓜ならもう季節外れです」
どう脳内で話が転がったか、そんなことを言い出す。
言いながら右上に黒石を置き、まずは陣を固めようという構えだ。
盤上は未だ大局定まらず、勝負の行方は掴めそうにない。
「いやいや、妖夢。それなら今月はお団子よ」
話が見えない。妖夢はふと苦笑して、ではなんですか、と尋ねた。幽々子は笑って答えて曰く、
「あら、身に覚えがないというの?」
勿論覚えなどあるはずもない。先月、先月か。
何か特別なことがあっただろうか、と考えながら、妖夢は自陣を固めに走る。やはり何も思い浮かばない。
主人の意図を読めないというのは、従者として恥ずべきことだ。だけれどこの主人の、どこを読めばいいと言うのか。妖夢は困ってお茶を濁す。
「今年も雨月になるのでしょうか」
幽々子はその言葉に首を傾げて、
「あなたに足りないのは想像力ね」
と返した。
ぱちり、ぱちりと碁盤の上をふたつの手が行き来する。
盤上はやや黒が押し気味だ。広げた陣地を大事に守り、これから局所の攻防が始まる、という場面である。
「夏の宴会は随分と大袈裟だったわ」
主人はそう笑いながら、白石を陣に切り込ませた。
「天狗と鬼が頑張りすぎましたね」
妖夢は応じながら、その侵略者を排除に掛かる。
大袈裟、という表現が正しいかはわからないが、確かに騒がしい宴会だった。宵の口から始まって、気が付いたら全て終わっていたような記憶がある。あるいは酔い潰されたのかもしれないが、詳しいところは忘却の彼方である。
「妖夢も随分楽しそうだったわ。――その顔は、覚えてないと」
言われてぎくりと肩を震わせた。そう、後半の記憶がないのだ。
ふうん、と幽々子は笑って、じゃあ教えてあげるわ、と囁いた。
――あんなに積極的な妖夢、初めて見たわ。
幽々子は艶っぽくそう言って、碁石をひとつ、妖夢の組んだ陣の内側に置いた。
「えっ」
思わず声が漏れた。失策。言葉に気を取られたせいか、あるいは記憶に潜っていたせいか。
大事に大事に組んだはずの陣が、たった一石で崩された。
そうなれば、後に残るは見るも無残な敗北だけである。
脳裏に僅か、主人の姿が浮かんで消えた。
「責任とってね?」
幽々子はくすりと笑って、まだ続けるの、と尋ねた。
全く持って投了である。
690 baka@参加 お疲れ様です
689 名無しZ@参加 お疲れ様でした
688 梶五日@参加 皆様ありがとうございました
687 K.M お疲れさまでした
686 名無し お疲れ様でした。
685 梶五日@参加 振り回される妖夢成分も出せそうですし、参考になります
684 かぼちゃ@参加 そんな感じでそろそろ15分です
683 かぼちゃ@参加 上手く捻りになれそうですね
682 K.M ミスリードですね
681 梶五日@参加 ああ、それはアリかもしれない
680 baka@参加 あーそれよさそうね >名無しZさん
679 名無しZ@参加 お題を利用して「従者なら主の考えを読み取ることこそ責任」とかやっといて、そっちに意識させといて最後に「この前の責任取ってね」と持っていったりしたら面白いかも
678 バインド ふん
677 K.M ヤることヤってしまったらなば、行動に付随する責任は取らねばならない
676 かぼちゃ@参加 >>649やはり、この振り回す楽しさが一層ですかね
675 名無し ようむ~ ようむ~
674 ライア@参加 読めなかったら、お題にならないの
673 baka@参加 妖夢なんだから読めないままでいてほしいな
672 梶五日@参加 ですね。妖夢としては何とか読みたいという意識があって、でもギリギリまで読めない、としたかった
671 ライア@参加 幽々子と妖夢の意識がガッチリ噛み合う瞬間が
670 かぼちゃ@参加 あやふやな幽々子の会話を味合うよりも
669 かぼちゃ@参加 先ほどの文は「だけれど~」と続きますが、どうしても妖夢は読まねばいけない、というニュアンスが先に来るでしょうか
668 名無し たまに幽々子と噛み合うと発揮されるパワーはすごいけど。
667 名無し 妖夢の鋭さはまさにピンポイント誤爆撃ですからね。
666 ライア@参加 あと一語有れば、という物足りなさが、全体的に妖夢の責任をあやふやなものにしているのかと
665 かぼちゃ@参加 >主人の意図を読めないというのは、従者として恥ずべきことだ。 なんて一節があると、やはりあやふやではなく推測するべきだろうか。と読みつつ考えてしまうかもしれません
664 梶五日@参加 主人の意図を掴みかねるのが妖夢の特徴だと思うので、そのあたりの妖夢側の心境をもう少し掘るべきかなとも思いました
663 かぼちゃ@参加 あやふや感はいいと思うので、そこが強く書かれてればとは思いました
662 ライア@参加 曖昧さで幽々子様を表現しているのは良いのだけど、曖昧さが噛み合っていない感じ
661 baka@参加 幽々子様のあやふやふわふわ感を狙っていたのだったら素晴らしい
660 K.M なんだか色々とあやふやですね。幽々子様は実にそういうキャラのイメージとも
659 名無し (適当
658 名無し それが囲碁で表わされていたというアレ
657 名無し 妖夢が組んでいたのは警戒心で,幽々子はその間隙を突いたんですね。
656 かぼちゃ@参加 逆に、そこで疑う的なものの方が良い?
655 試験中 @見学 現実で妖夢が大事に組んでいたのはなんだったのか、とか。
654 ライア@参加 先月の話を今になって切り出す辺り、何か幽々子側に心境の変化と言うか、そういうのを匂わせてくれたら
653 かぼちゃ@参加 私は口で適当に言っているだけとも見たので、責任を自覚などまで言ったら書きすぎとも思いましたかね
652 試験中 @見学 >大事に大事に組んだはずの陣が、たった一石で崩された。
651 名無し 梶さんの好みが垣間見えるご発言ですね。
650 ライア@参加 しかし妖夢に薄ら記憶が残っている書き方からすると、何も無かったとは言い切れないかも
649 梶五日@参加 もう少し、じわじわ追い詰められていく感じの場面が欲しかったなと書きながら思いました。妖夢を振り回す楽しさ。
648 名無し 幽々子の口三味線。そういう可能性も大いにある。
647 baka@参加 この幽々子様はぜったい何もされてないとおもう ただ囲碁が勝ちたかっただけ()
646 ライア@参加 (そこがゆゆみょんの良い所じゃないか
645 K.M 主人に手ぇ出してる時点で従者としての責任も何も……
644 かぼちゃ@参加 これは、妖夢が本当に何かしでかしたのか、幽々子が適当に言っているだけか、両方取れるとみていいのでしょうか
643 ふうら 言うことなし?
642 ふうら 囲碁で妖夢が劣勢になっていくにつれて、責任が重く乗りかかっていくような展開であれば
641 名無し このままだと責任という概念がふわふわ浮いている印象はあります。
640 名無し 妖夢と幽々子を出すのならば,従者としての責任といったところにも繋げられていると良かったのかなとも。
639 K.M 記憶がないのなら、自覚し認知するところから始めねば
638 試験中 @見学 囲碁の展開と、話の主軸がちょっとかみ合っていないように見えるのが残念。
637 梶五日@参加 宴会の話とオチの間に、妖夢自身がどうにか振り返るような場面を置くべきだったかなと。そのあたりが時間経過不足だなーと
636 ふうら もう少し後ろにずらせたら、いい感じにお題が消化できたと思うんですよねー
635 ふうら 舞台を
634 名無し 一方的な告知で終わっていますからね。責任。
633 ふうら そう、妖夢が責任を感じていればよかったですね
632 かぼちゃ@参加 碁に各自の会話の応酬をなぞらえるのは面白いと感じました
631 ライア@参加 もう少し、妖夢が最後に責任を感じる流れが欲しい
630 梶五日@参加 あ、ミスですね。以てで合ってます
629 baka@参加 テーマとしては良かったのでは? 責任云々のお話ですし
628 かぼちゃ@参加 そうですね、碁をネタにしたとすると、これは不自然かなあとは感じました
627 K.M 「全く持って投了である。」 この場合の『持って』ってこれでいいんでしたっけ? 『以って』ではなく
626 名無し 敢えて引っ掛かる文章を挙げるならラスト一行かな。ここはどうにも。
625 ライア@参加 この話に時間の流れはそんなに必要無かったかな、と
624 ふうら お題の感情が妖夢自身と上手くリンクしてないように思いました
623 梶五日@参加 時間経過の描写が足りなさすぎました。囲碁こんな早く終わらないw
622 baka@参加 「西瓜ならもう季節外れです」この台詞が妖夢の勘違いを勘違いだとわからないまっすぐさが出ててよかったです
621 名無し この作品は流れを通して読みやすかったと思う。
620 生煮え@見学 23:30まで
619 かぼちゃ@参加 「一石一夕」梶五日氏
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